腸内細菌と病気

腸内細菌のバランスを調べ、治療法を決定します

ヒトの腸内細菌は、Firmicutes門(乳酸菌、連鎖球菌、クロストリジウム属など)、Actinobacteria門(ビフィズス菌など)、Bacteroides門(バクテロイデス属など)、Proteobacteria門(大腸菌、サルモネラ菌、ビブリオ菌、ピロリ菌など)に属する細菌しか存在しません。

腸内細菌のバランスが崩れると病気に

これらの腸内細菌は、腸内フローラ(細菌叢)を形成してヒトと共生することで代謝系や免疫系に影響を与えています。
腸内フローラは善玉菌と悪玉菌で構成されていますので、そのバランスが崩れると様々な病気が発生します。
例えば、放線菌群の仲間であるビフィズス菌が少ない乳幼児は、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にかかりやすいと言われています。ビフィズス菌はリンパ球などの免疫細胞に作用して異常な免疫反応を抑えたり、腸管粘膜のバリアーを強化してアレルギー物質の侵入を阻止したりする働きがあるのです。一般的に、母乳で育った乳幼児や自然分娩児はビフィズス菌をたくさん持っていると言われています。

最近ではバクテロイデス・テタイオタオミクロンという菌の割合が減少し、Firmicutes門の細菌が相対的に増えると、肥満や糖尿病になりやすいという報告がありました。
テタイオタオミクロン菌には食物繊維を低鎖脂肪酸に分解し、脂肪の蓄積や血糖の上昇を抑える働きがあるからです。
また、バクテロイデス・フラジリス菌が増えると大腸がんの危険性が高まるという報告もあります。
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の患者さんの体内では、クロストリジウム属の菌が減少し、Bacteroides門やProteobacteria門の細菌が増加していると指摘されています。

このように、腸内の細菌分布が何らかの原因で変化すると、体の恒常性が保てずに病気を発症してしまうのです。
予防のためにはまず患者さんの腸内細菌の状況を知ることが必要ですが、約400種類もあると言われている腸内細菌のDNA(遺伝子)をt-RFLP法という方法で網羅的に調べることが可能です。この方法で腸内細菌のバランスを判定し、治療法を決定します。
難治性の過敏性腸症候群や頑固な便秘症の方にも有用と考えられていますので、お困りの方はご相談ください。検査料は30,000円(税別)となります。
当院では腸内フローラの解析結果に基づき、以下の治療法を提案しています。

腸内環境を整えるサプリメントも提供しております

米国メタジェニクス社から取り寄せているプロバイオティクスがあります。腸管バリアーの強化だけでなく、消化管の不快症状(膨満感)、アレルギー改善、一般の下痢、および抗生物質が原因の下痢、過敏性腸症候群などに効果があります。従来の整腸剤で効きが良くない方や、乳糖不耐症の方にもお勧めです。
また、プロバイティクスの腸管内正着を維持し、腸内細菌叢のバランスを整えるために、イヌリンなどの水溶性食物繊維を主成分としたプレバイオティクスの併用を推奨しております。

腸管バリアー強化療法

ビフィズス菌を増やすラクトフェリン

腸管粘膜は、IgAという免疫グロブリンの働きによりアレルギー物質の侵入を阻止していますから、IgAが多いとアレルギーになりづらいと考えられます。
善玉菌、特にビフィズス菌を多く摂取するとIgAの分泌が促進され、腸管粘膜のバリアーが強化されます。
ラクトフェリンという母乳に多く含まれているタンパク質にビフィズス菌を増やす働きがあるので、ラクトフェリンを同時に接種するのが効果的です。当院ではラクトフェリンをサプリメントとして提供しております。費用は1カ月分が7,800円(税別)です。

糖尿病や肥満の予防に効果的なサプリメントも

前述のようにテタイオタオミクロン菌が糖尿病や肥満の予防に有用ですが、この菌を直接摂取できるような製剤は今のところありません。
ですので、ご自身の持つテタイオタオミクロン菌を食事で増やすことが必要になります。
ごぼうなどに含まれている食物繊維やブルーベリーなどから摂取できるポリフェノール、大麦に入っているβグルカンオリゴ糖は、菌を増やす作用があると証明されています。
食事でこれらの栄養素を摂取することが難しい場合は、サプリメントを紹介しております。

大腸がん予防除菌療法

ネイチャーという科学雑誌に掲載された、バクテロイデス・フラジリス菌が大腸がんの原因に成り得るという情報に基づいています。
この菌を除菌する抗生剤はピロリ菌除菌にも使用されていますので、安全性は確保されています。
除菌後は善玉菌を増やすことで、フラジリス菌を再増殖させないようにすることが大切です。

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